”空気”作りだけで終らない”Fact”を導くMTG手法
自分は主にプロジェクトマネージメントを生業としているのですが、
ひと口にPM(プロジェクトマネージメント)と言っても、
会社やプロジェクト毎で様々な役割の分担があります。
プロジェクトマネージメントを進行管理の面だけでなく、広義に”プロジェクト全体を司る人”と定義付けた場合、
バックログなどでのタスク管理やスタッフへのリマインドのみならず、
いわゆる本来ディレクターが担うコンサルティングの分野においても目を配る必要があります。
前者との違いは、対象が制作スタッフだけでなく、クライアント、つまり外部へ向けての情報共有が主なマターとなるわけです。
情報の共有と感情の共感
プロジェクトにおける情報の共有とは、端的にいうと”Fact(真実)”です。
誰が、何を、いつまでに、どうする
といった事実を基に制作スタッフへ、情報として共有します。
もちろんそれだけではなく、
・そもそもでそのTODOの起点は何(誰)なのか。
・どういった経緯で、そういう結論に至ったのか。
・それを行う意図は何なのか。
といった部分もFactの中に含まれます。
極端なウォータフォール型の請負業だと、この辺りの肉の部分がスッ飛ばされて制作へ落ちてくるため、
デザインフェーズなどで手戻りが多いのは往々にしてよくあることかもしれません。
一方で、コンサルフェーズの場合、タスクに落としこむ手前の段階にあるため、
TODOのためのFactは、前者に比べるとさほどの重要性を持たない事があります。
むしろFactよりHypothesis(仮説)や、クライアントからのヒアリングから
引き出した想いや目的を引き出す事がまず重要となるでしょう。
仮説を事実に変えたときに潜む谷
昨今ではコンサルフェーズにおいて、クライアントとワークショップの場を用いるプロジェクトも
増えてきたことと思います。
実際、最近はPMとして入ったプロジェクトにおいても
リアルタイムドキュメンテーションのファシリテートを行う場面も増えてきました。
リーンキャンパスや、グラフィックファシリテーションなど、
視覚化をする事において仮説や想いの見える化を行うMTGです。
旧態的なヒアリングシートの質問項目からRFPを出してもらって、粛々と進めるプロジェクトと違い、
クライアントとパートナーシップを築きながら、チームビルディングをする手法です。
一見すると、この手法はプロジェクトの体制をクライアントとフラットに築く上で一定の効果はあるのですが、
慣れないと、なかなかどうしてプロジェクトが停滞する場面がよくあります。
それは見える化までは良いのですが「で、誰が、何から始めるの?」が、把握しづらいということです。
当事者意識という名の幻想
ウォータフォール型、アジャイル型などプロジェクトの形態も増えてきていますが、
個人的にアジャイル型は、小さなウォータフォール型の集合体と感じる場面があります。
やはり人間、古来より”誰かが決めて”、それに基づいて、自分のやることを進行するという図式に慣れているからでしょうか。
停滞しているプロジェクトを進める特効薬は「決める人がいないなら、まず決める人を決めてくれ」なのは、
アジャイル型のプロジェクトにおいて見過ごしがちな部分です
(得てして「アジャイルであること」に拘ってしまっている事が多いのが理由かと)。
谷を越える方法としてのリーダーシップ
リーダーは原則1人です。当然ですね。リーダーが何人もいると指示系統が破綻します。
しかし、本質的なリーダーである事と、社内における上司的権限を持っている事は、
必ずしもイコールではありません。
プロジェクトにおいても同じ事です。
「クライアントだから言うことを聞かなくてはいけない」というバイアスから
思考停止してしまっている請負制作は多いと思います。
目を向けるべきは1点『プロジェクト本来の目的』です。
目的を正しく把握していれば、権限を持つ人の指示を仰がずとも、個々で「今何が必要なのか」の判断はできると感じています。
リアルタイムドキュメンテーションやアジャイルでのチームビルディングにおいて、本質的な目的はそこにあります。
”空気作り”やパートナーシップ築きだけでなく、参加者1人1人が「このプロジェクトにおいて、これが正しい」と判断できる基準というFactを共有する事。
そのためのMTGのファシリテートが大事になってきます。
MTGにおけるワークショップ自体をサービス化しているのなら別ですが、
それらからのWBSへの落とし込みにおいては、まだまだ骨が折れるところです。
しかし、プロジェクトの可能性を広げる”Hypothesis”とプロジェクトを前に進める上で大切な”Fact”を、しっかりと見極める目をもつこと。
それが、これからのディレクター/プロジェクトマネージャーにとって、
もっと必要なスキルになってくるのだと思います。
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